マルは しあわせ
マルは かわいい ねこです。まあちゃんが とても かわいがって いました。
「ねえ おかあさん、マルが おしろいくさいよ。」
と、まあちゃんが いいました。
「どうしてでしょう。あんたの はなの せいじゃ ない?」
と、おかあさんは おっしゃいました。
「マルや、ここへ おいで。」
と、まあちゃんは マルを よびました。マルは よろこんで、まあちゃんの そばへ きて、ころがりました。まあちゃんは、マルの あたまを かぎました。
「やっぱり おしろいくさいよ。」
「マル、どうして おまえは、おしろいくさいの?」
なんと きかれても、ねこですから ごへんじが できません。
「きっと、どこか おねえさんの ある おうちへ いって、かわいがられて いるのでしょう。」
と、おかあさんが おっしゃいました。
「どこかしら。」
と、まあちゃんは かんがえました。
「ああ、こして きた あの おうちだよ。」
十日ばかり まえに、あちらの あたらしい 二かいやへ、こして きた おうちが ありました。そこには かわいらしい 女の 子が います。ことしから 学校へ あがって、じぶんと おなじ くみです。
あくる日の あさ、みちで、
「とめ子ちゃん、いっしょに いきましょう。」
と、まあちゃんが こえを かけました。
「ええ、いっしょに いきましょう。」
と、かけて きました。
「あそびに いらっしゃい。」
「あんたもね。」
ふたりは なかよしに なりました。
まあちゃんは とめ子ちゃんの おうちへ あそびに いきました。
「まあちゃん、おはいり。」
と、とめ子ちゃんは よろこびました。とめ子ちゃんの おうちには、おねえさんが ふたり ありました。
「マルが あそびに くる?」
と、まあちゃんが きくと、
「まい日 くるわ。」
と、とめ子ちゃんが いいました。
「かわいい ねこね。」
と、おねえさんたちも いいました。マルは みんなに かわいがられて、しあわせだと、まあちゃんは おもいました。
青空文庫より引用